ukyokyokyo’s diary

主に映画のご紹介、視聴感想をお話します。

『ロリータ』恋に溺れると碌なことがない…ある男の悲惨な物語

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映画『ロリータ』の紹介

概要

『ロリータ』(Lolita)は、1962年のイギリスの映画。ウラジーミル・ナボコフの同名小説を原作とし、ナボコフ本人の脚本でスタンリー・キューブリックが監督した作品。上映時間152分。モノクロ。日本での公開は1962年9月。

(Wikipediaより引用)

(※エイドリアン・ライン監督による1997年公開の『ロリータ』とは別物です。今回の記事ではほとんど触れません。ご了承ください。)

出演・監督

ハンバート・ハンバート
演- ジェームズ・メイソン(横森久)

ドロレス(ロリータ)・ヘイズ
演- スー・リオン鈴木弘子

シャーロット・ヘイズ (ロリータ母)
演- シェリー・ウィンタース水城蘭子

クレア・クィルティ
演- ピーター・セラーズ羽佐間道夫

ヴィヴィアン・ダークブルーム
演- マリアン・ストーン

メアリー・ローレ(看護師)
演- ロイス・マクスウェル

監督 - スタンリー・キューブリック


あらすじ

霧深い日、中年男が荒れ果てた大邸宅を訪ね、
ドロレス(ロリータ)・ヘイズの件で脚本家のクィルティという男を射殺した。

その4年前、射殺犯となるハンバートは、秋からアメリカの大学で講義することとなったため、パリからアメリカにやってきた。その前の一夏を保養地で過ごすこととし、下宿候補シャーロット・ヘイズ未亡人宅を訪れた。シャーロットは書籍委員会の会長で、前回の講演ではクィルティを講師として呼んでいた。ハンバートは、帰り際に美少女を見て、一目惚れする。少女は、未亡人の娘ドロレス、通称ロリータであった。

(Wikipediaより引用)

 

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『ロリータ』を見た感想・考察(ネタバレあり)

『ロリータ』の視聴の感想

なんといいますか…私がこの映画を見た理由が
ロリコンの大元でしょ?どんなのかな?やっぱ変態臭いのかな?うふ
という邪な気持ちで見たんですよね…

視聴後はもう、なんか…馬鹿にしてごめんなさいってなりました。

前情報でキューブリック版はかなり原作と違うと聞いていたので、
「まあ…キューブリックだしそうだろうね」と思いつつ。
原作を読みたくなりました。今度購入してみよう…。

端的に申しますと。
「行き過ぎた愛は身を滅ぼす」。これに尽きる。

ん?ロリコンの語源にもなった作品なのに、
肝心な少女性愛はどうなんだって?

私が見た感じではそこまで
ロリコン!!!」とは思いませんでしたね。
どちらかというと愛するきっかけと申しますか、
一つの要素でしかないかなと感じました。

これはロリータ役のスー・リオンさんが当時15歳で、
役より年上だからというのもあるんでしょうね。
素敵な美しい女性、という風にも見えるからかなと思っております。
(原作は12歳、この映画では13歳という差もありそうです。)

話が反れたので感想に戻りますと、
私個人的には、全く感情移入はしませんでした。
人の破滅を淡々と見ていくと言うような…
アレです。俯瞰的に見ていました。

だってですね、全員狂ってて人間味がなくて…w
唯一ロリータのお母さんが普通な気もする(立場的には腹立つけど)。

悲恋といえば悲恋なのかな…
でもどっちかっていうと「あーあ。」てな感じです。

感情移入せずに見るのも乙なものですよね。
性描写も全くなく、とても見やすかったです。
とても興味深い内容でした。

 

 

 

 

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『ロリータ』解説・考察(ネタバレあり)

 

ここからは人物別に考察したものを解説していきたいと思います。
時系列で解説も考えたのですが…
巨匠キューブリックの映画はどうしても長くなりそうなので許してください…。

時系列やストーリーそのものが気になる方は是非本作を見てみてくださいね。

 

ロリータを愛しすぎて人間性を失ったハンバード

あらすじにもある通り、ハンバートは大学の講義に出席します。
講義の帰り道に、とある美少女が居ました。それがロリータです。

(関係ないけど名前はハンバート・ハンバートです。マリオみたいですね。すげえ名前)

もちろんハンバートは一目惚れします。
(まあそうじゃなきゃこの作品はなかったことになりますし)

ハンバードは彼女がニンフェットだといい、恋に落ちます。
(おそらく大人な恋愛…性的欲求も含まれているかと)

ここでニンフェットってなんぞや?と思いますよね。
ええ。ハンバードによる造語だそうです

ニンフェットとは

ニンフ (ギリシャ神話の美しい妖精) を語源とする用語であり

9歳から14歳までの少女をさす語ではあるが、
異性を引きつける性的な特徴を (心理学的な要素を含めて) なんら示さない女児には用いられない。
ニンフェットはその2倍も何倍も年上の魅せられた者に対してのみ、
人間ではなくニンフの本性を現すような乙女である。
男性がニンフェットの魔力に屈するには乙女と男との間に年齢差が必要であり、それは10歳差以下ではなく、
一般的には30~40歳差だが、90歳差の例もあるとしている

 
(Wikipediaより引用)

 

細かい定義はあるようですが、
どうやらどことなく魅力を感じる9歳~14歳程の少女のようです。
相当な年の差が必要なようで…めんどくさいですね。


とにもかくにも、ロリータにニンフェットを感じたハンバードは
彼女に対して激情を抱くようになります
行き過ぎた愛です。

どれぐらい行き過ぎかというと
ロリータの母親、シャーロットに惚れられて求婚されるんですけど、
そのまま結婚してしまいます。
愛しているのはロリータなのにその母親と結婚…
何故か?
それは「ロリータと一緒に居れるから」。

ヤバくないですか…
歪んでいる…

そして、肝心の奥様には興味ない。
寧ろ熱烈な『抱いて』アピールも鬱陶しく感じるようです。
気持ち悪いなこのオバハンぐらいの感情です。
(そのハンバードの表情のお陰で、シャーロットの色仕掛けも物凄く滑稽に見えます。)

シャーロットもシャーロットで夫婦生活にロリータは邪魔だと判断し
ロリータはキャンプ(寄宿)に送られてしまいます。
なんだよそれ。

ですが結婚した本当の目的がシャーロットにバレてしまい、
シャーロットは激怒しながら家を飛び出し、
その際に事故で亡くなってしまいます。

ハンバードは厄介払いが出来たとでもいう様に、
義父の立場を利用してロリータを連れ戻します。
ちょっとぐらい悲しめよ…

その時二人で泊まるホテルで…
理性が働くわけもなく、ハンバートとロリータは体で結ばれた訳です。

体だけ。


前半部分をさらっと説明しましたが、ヤバくないですか…この人物たち
母親は娘が邪魔で、
ハンバードは母親が邪魔で。
娘は好き勝手にしている。

ロリータもロリータでハンバードをしっかりと落とそうとしてるし。
13歳ですよ??

前述した「狂っている」の意味が分かるかと思います。

記事トップに記載している画像…オープニングのシーンなんですが…。

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これ。
ロリータのペディキュアを塗るハンバードです。

何ともムーディで上品なエロティック。

ハンバードがロリータに隷属しているように見えます。
見えるってかしてるんですけどね。
ロリータが「従いなさい」といってる訳でもなく、
ハンバートの自己満足。

このように、ロリータを連れ戻したハンバードはエスカレートしていくんですよね。

ロリータが高校での演劇に出演するという話に大反対。
精神科医(クィルティ?)に演劇+ある程度の自由を与えるべきと言われ、
束縛がやや行き過ぎた頃には

お前は俺と一緒に居れるんだから楽しいに決まってる(超意訳)

とのたまう始末。
いやぁ…醜いですねえ。
自分好みの男性に言われたとしてもドン引き必至です。

ロリータを旅に連れ出すもクィルティに連れ去られ、
その数年後別の男と結婚し妊娠したロリータからお金の無心をされるという…

ハンバートはそこで全財産をはたき、ロリータに逢いに行きます。
その時に現れたのは以前の魅力のあるニンフェットのロリータではなく、
太って醜くなったロリータでした。

そこで諦められたらどんなに良かったでしょう。
ええ。視聴者が願ったまともさの欠片もなく

俺の元へ来い(超意訳)」

と縋るように言うんですよね。

私「頼むハンバート…!これ以上生き恥を晒さないでくれ!」

それに対しロリータは手酷く振ります。

あなたの事沢山騙してきたけど、
世の中そんなもんよね(キャピ☆)

と。

もはや何の言い訳にもなってないし悪びれてない…w

その後、ハンバートはクィルティを殺しに行くわけですね。
冒頭につながるわけです。

おーおー。クズ同士好きにやってろ。と思いながら見てました。
見事殺人犯になり、裁判の判決を待つことなく病死。

無茶するし、報われないし、なんだこいつ。
ほんとなんなんだこいつ…

ハンバートに対して私が感じたのは共感性羞恥ぐらいです…w

おそらくですが、キューブリック版のハンバートは
ロリータと出会う前はかなりマトモな人間だったんじゃないかと思います。

その少女性愛をひた隠しにして、
教授として、普通の人間として生きていたんだろうな。

少女性愛を偏に悪と言うのもおかしな話ですけどね。
本来はただただ狭き門で理解されない性的嗜好というだけ。
理解されず、実行すれば罪になる。つらい立場だと勝手に思ってます。
本当に悪なのは、その欲望を満たす為に行動する輩ですから。

その輩のトリガーを引いたロリータは本当に魔性の女です。





魔性のロリータにも愛する人はいた

ハンバートの項目で、粗方人柄は伺えたかと思いますが、一応。



まずハンバートと出会った庭でのシーン。
彼が「好意的」「性的」な目で見ている事を
恐らくですがしっかり分かってます


「へぇ、あたしの事そんな風な目で見るんだ」


とでもいう様に。

何故か?
それは「男を知っているから」。

ふぁ!?となりますよね。
私も脳内整理した時なりました。

ハンバートが初めてなんじゃないの!?と思いました。

違います。
初めての相手はクィルティ
ハンバートと出会う前…彼女はクィルティによって「女」になったのです。

そこでロリータは映画監督のクィルティに惚れたのです。
(いや、惚れたから抱かれたのか…)

それにしてもクィルティまじでクソ野郎だな

だから、ハンバートからのしつこいぐらいの好意は、
「へぇ」「じゃあ都合よく使ったろ」ぐらいにしか思ってないんですよね。

寧ろ物語の後半はウザったく感じてますし。

この構図、シャーロットとハンバートの関係に似てますね。
シャーロット→ハンバート→ロリータ→クィルティ
虚しい連鎖です。

ホテルで結ばれた日は、実は誘ったのはロリータ側なんですよ。
分かっててハンバートを誘ってます。
恐ろしい子

こんなにも幼くも妖しいロリータですが、
母親に対してはさほど醜い感情はなかったようで。
シャーロットの前ではただの反抗期の娘であり、
母の死を知った際は悲しむ。そんな一面も見せました。
(その直後ハンバート誘惑しとるけどな)

自分への熱い視線の意味を分かっていながら自身の母親と結婚したハンバート。
そんな人間に対する感情はやっぱり「へぇ」程度なんでしょうね。

なので一見素敵な関係になれたように見えますが
ロリータはあくまでハンバートをオトす…すなわち惚れさせ夢中にさせるのが楽しかっただけ。それだけです。

本命のクィルティはというと、
「君を映画スターにする」とロリータに甘い言葉をかけ
ハンバートと離れるための協力はしてくれたのですが、
その映画とはピンク映画(ポルノ)であり、ロリータが望むものではなかったのです。

なんと滑稽でしょう。
ハンバートに偉そうに言えないぐらい情けない。

アレですかね。
自分の夢を叶えるために自分の魅力を最大限に生かした人生のつもりが
パパ活でしか活かせなかった、と言ったところでしょうか。

 
という虚しい結果ではありますが
犯罪者にもならず、死なずに結末を迎えたのはロリータのみです。
結婚して妊娠して…ちゃっかり幸せになってやがる…w

 

 

まとめ

ある人が見れば「悲恋」
ある人が見れば「変態臭い」
ある人が見れば「なんだこれ」
ある人が見れば「ドロドロして面白い」

今回はそんな映画を語ってみました。
ロリコンの語源だから…と思って邪な目で見た私は変態なのか…

綺麗な愛の話に飽きた方に是非お勧めしたい作品です。

とは言え視点が違えば物凄く意見が分かれそうで面白い内容なので、
機会があれば皆様見てみてください。

現状は次の映画は決めていません。
洋画であることは確実だけど!